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『俺俺!』
「人違いです。切ります」
『嘘だろ!?俺だよ一雅!廉也だよ!』
「五月蠅いから切る。俺今芥子乃に頼まれてことやってるから」
『まだやってんの?俺なんかもう終わらせた・・・』
耳元でわんわんと話しかけてくる宗良が煩わしくて、電話を受けた水墨は強制的に電話を切った。
またしても宗良から電話がかかってきたようだが、面倒臭いためまた切った。
セキュリティー部門のプロも沢山いるものの、誘拐犯の居場所は未だ特定できておらず、逆探知も上手くいっていないらしい。
カタカタとパソコンをいじっていると、宗良とは異なる番号からかかってきたため、それにはすぐに応じる。
「何か」
『現状報告しろ』
「命令口調という圧力で過呼吸になった部下のことを忘れたのか。そういうのは今の若い奴らには通用しない」
『口答えはいい』
はあ、と電話をかけてきた相手、芥子乃に聞こえるようにわざと聞こえるようにため息を吐いた後、水墨はとりあえず今わかっていることを話す。
すると、芥子乃はそこにいるのであろう誰かに何か指示をしていた。
芥子乃からの電話を切ると、水墨はまたパソコンに目を向ける。
夜9時になる少し前。
某ビルの某部屋に、男が現れた。
エレベーターもあるが階段を使って上階へと上って行くと、辺りに誰もいないことを確認して、迷わずに向かった部屋のチャイムを鳴らす。
中からは声も聞こえず誰も出て来なかったが、もう一度チャイムを押してみたのだが誰も出てこなかったため、急いで作った鍵を穴にねじこむ。
くるりと回せば簡単に開く。
そして部屋の中に入ると、そこには何やら鉄のような臭いがした。
部屋の奥へと進んで行くと、そこには1人の男が倒れていた。
血まみれになっている男を横目に、その男の部屋にいる小さな身体を抱えると、自分の痕跡を消すようにしながらその場を後にする。
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