第一音【to Ο+】

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翌日11時ごろ、芥子乃と典人は誘拐事件の方に狩り出されていた。  とはいえ応援で、特に自主的に何かすることもなかった。  「車と金は用意出来た。どこに持って行けばいい?」  犯人からかかってきた電話に、交渉人は要求された車と金を渡す時間や場所などを聞いていた。  その時、交渉人による時間の引き延ばしが上手くいったようで、逆探知に成功。  犯人は移動しているらしく、その周辺に刺捜査員たちが向かうこととなった。  「典人」  「わかってる」  12時半―  指定された時間と場所に怪しい男が現れると、車の中に身体を押しこんだところで捜査員たちが一斉に男に飛びかかる。  単独犯であることは調べがついていたし、犯人の身元さえ分かれば人質をすぐに助け出せると思ったようだ。  「犯人確保!!」  犯人と思われる男が逮捕されている時、芥子乃と典人も犯人に近づいていた。  そして担当がその男を連れて行くと、芥子乃と典人はその場から何も言わずに去って行き、何かを持ったまま水墨のもとへと向かった。  「大丈夫か?勝手に持ってきて」  「平気だろ。スリされたことにも気付かないなんて、犯罪者としてどうかと思うが」  「普通気付かないだろ。やられて気付くのは同業者くらいだ」  勝手に持ち出したそれを水墨に渡すと、水墨はそれを受け取り、パソコンにつないで何かしていた。  「芥子乃と碧羽が狩り出されるとは思ってなかったけど、犯人捕まったの」  「ああ。無事に、な」  犯人と思われる男は誘拐などしていないと否認しているようだが、麻薬の売買をしていたということで、ひとまず再逮捕された。  誘拐に関しての供述はしておらず、麻薬を売りにあの車に行っただけだということだったが、男の部屋を家宅捜査しても何も出て来なかったそうだ。  もしかしたら共犯者がいたのでは、という警察の捜査に疑念を抱くマスコミ報道が流れていた。
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