知らんぷり

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 「―――――で?結局誰にするの?早くしないと一時間目終わるよ?」 ガタッと音を立てて立ち上がり、周りを蔑むような視線を教室内に走らせた女子がいた。運動神経抜群、女子テニス部部長、播磨日和だ。その声のあまりの冷たさに誰も口を出すことができない。 「あぁ、一つ言っておくけど、私は生贄になるつもりはないから。たとえ仲良くしている子が『羊』に選ばれてもね」 日和の視線が後ろの席から自分を見上げている千羽穂希に注がれる。穂希は日和といつも一緒にいる女子だ。  呆然とする穂希を無視して日和は続ける。 「まぁ、そういうわけだから早く決めてよ。藤原さん」 ゆめの方に向かって言い放った。 ゆめはしばらく下を向いて震えていたが、ふと顔をあげた。隣にいる由依を見る。 「どうしよう……やっぱり私は決められないよ……」 「じゃあもうくじ引きにするのはどうかな?」 綾が言うと、ゆめは頷いた。  そこからの動きは早かった。教室にあった適当な大きさの箱に、ゆめ以外のクラスメイト全員の名札を入れる。その中からゆめが一つずつ、名札をとっていく。最後に残ったものが、「藤原ゆめにとって必要のない者」ということになり、今月の『羊』となる。  震えたゆめの声が、教室中に響き渡った。 「それでは、くじを引いていきます。まず、清水さん、藤沢さん…………」 次々とクラスメイトの名前が呼ばれていく。蛍の名前も呼ばれた。  ひとり、またひとり  まだ呼ばれていない人は、神に祈ったり頭を抱えたりしてゆめに名前を呼ばれることを祈っていた。  そんな醜態を晒して、お前らにプライドというものはあるのかと蛍は聞きたくなった。  
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