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東京都が所有する公共施設のリハーサル室で、新しい舞台の稽古が始まった。二十名ほどだろうか、全出演者が集まっている。その中に、この作品に誘ってきた後輩の姿もあった。少し離れた場所にいたので軽く目礼をすると、向こうは大きく手を振って応じてくれた。
今回の作品は、宝探しをする冒険家の半生を描いた物語だという。冒険家は、様々な苦難に立ち向かいながら宝物を探すくせに、手に入れるとすぐに売り払ってしまう。
「どうしてだと思う?」
脚本も担当した演出家が、全員を前にストーリーを説明している。多くの舞台作品の稽古は、こうした「本読み」と呼ばれる物語の解説作業から始まる。
「冒険家にとって、宝物が“ある”ってことが大事なわけ。それが人生の半分。そして残りの半分は、宝物を探し出す過程だ」
なかなか難解な物語になりそうだなと思った。
演出家がどうにか物語を解説し終えると、全員に脚本が配られ、メインの出演者たちを残して解散となった。もちろん私も帰る。ふと振り返ると、残っているメンバーの中にあの後輩がいるのを見つけた。
そっか……、いつの間にか追い抜かれちゃったんだ。
悔しい思いは何度もしてきたけど、これはだいぶ応えた。
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