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 どうやらお父さんが、私の部屋に時限爆弾を仕掛けたらしい。  珍しく酔っぱらったときに打ち明けたということを、お母さんから電話で報告された。  長野にある実家から上京して三年半が経った。お正月とお盆だけは帰省するようにと心掛けていたが、結局今年の夏は帰らなかった。その隙にお父さんがとち狂ってしまったわけではないだろうが、時限爆弾とは物騒な妄言だ。  地元の役場に勤めるお父さんは、生真面目で酔っぱらうこともほとんどなかった。だからこそ意外だし、文字通りの爆弾発言は信じられない。  突飛なことは言わない。定番の口癖は「帰って来い」だ。「こっちで働け」と続き、「こっちで結婚すればいい」と展開する。顔を合わせれば、様々な話題から長野に戻る理由を見つけ、実家に戻って就職、結婚して子供を産むという人生を提案される。役場の立場からすれば、地元の人口が多いに越したことはない。  これまではどうにか、のらりくらりとかわしてきたのだが、ついに痺れを切らして強硬手段に打って出ようというのだろうか。日本が銃社会じゃなくてよかったと思う。 「で、(あかね)。次はいつ帰ってこれるの?」 「どうだろ。気軽に休めるような仕事じゃないんだよ」  私もお母さんも、お父さんの件は下戸の戯言として処理した。帰省できるのは次のお正月かな、と言うと、寂しそうな返事が電話口から聞こえた。
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