(二)

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 ひと月ほど前のことだ。 拡大型心筋症という診断を下されて、いよいよ機器の植え込みのために入院することになった。鎖骨下辺りにメスを入れ、皮膚と筋肉の間に入れ込むらしい。「皮下に植え込みます。男性の場合は目立ちませんよ」と説明を受けたが、筋骨隆々ならいざ知らず、胸板の薄い私では…と、半ば諦めた。  真新しい病室の窓からは、ゆったりと流れる二つ三つの雲が見えた。ここは時間の流れが違う。一日を十分刻みに予定を組み込まれる会社とは違い、己の決めた時間を適用する。それは時に怠惰な一日をもたらすけれども、本来の生活リズムはこういうものなのかもしれない。  三年ほど前に立て直された病院ゆえに、設備は最新のものになっている。天井からして違う。幾分ベージュがかった優しい白色となっている。照明のカバーは全面ではなく、縦板を幾つも並べた形状になっている。管には、LEDを使用しているよだ。人工的に感じる色調で、少々冷たく感じる。そうか、なるほど。なればこその縦板なのだ。少しでも心理的な負担を少なくしようという配慮なのだろう。なんだか嬉しくなった。
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