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「それが初めから分かっていたら何も面白く無いでしょう。色々な事を想像し、自由に物語を作っていけるから『夢』というのは面白いのです。水滸伝みたいな夢だからと言って、水滸伝のように国と戦う必要は無いのです。『何かの大会に出るために108人のメンバーを集めている』と言った物語にしたって、別に構わない訳ですからね」
「なるほど・・」
「それに、一番の肝は、あなたが選ばれた理由でしょうね。何の取柄も無い人が選ばれるはずがありません。そこには何か、深い意味があるのでしょう。それを想像するのは、なかなか興味深い事だと思いませんか?」
「確かに・・」
「ちなみに、そのパーティー会場には知り合いはいましたか?」
「いいえ、一人もいませんでした」
「それはさらに面白い。普通、夢と言うのは、今まで出会った人達が出てくるものですからね。あなた自身が、そういう出会いに関心を持っているという事なのかも知れません」
「はあ・・」
「そういう訳で、私は、あなたの夢を高く評価します」
店主が後ろを向いて、すぐそばにある引き出しを開けて何かを取り出し、また男に向き直った。
そして、店主の手から5000円札一枚が、テーブルの上に置かれた。
「5000円で、その夢、買い取りましょう」
「えっ!?今ので5000円ですか?!」
「はい」
「本当によろしいのですか・・?」
「ええ。先ほども申し上げたように、私は、あなたの夢がとても面白いと感じました。その夢に、私はこれだけの値打ちがあると判断したのです」
「そ・・そうですか・・。これだけあれば、妻にプレゼントが買ってやれます」
男はテーブルに置かれた5000円札を財布の中に入れて、立ち上がった。
「ありがとうございました。助かりましたよ」
「いえいえ。こちらこそ」
男はドアを開け、店を出て行った。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
店主が小声で言った。
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