ある青年の夢 1-2

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
そして、無事成功すると、今度はライオンのページを開いた。 目の前に本物のライオンと寸分違わないライオンが現れた。 ライオンも他の動物と同じく、少年の姿は見えないようだ。 少年は十分にライオンの体の構造を確認すると、ライオンを本に押し込もうとしたが、重すぎてうまくいかない。 なので、ライオンのページを開いたまま、ライオンにぶつけてみた。 結果は大成功。 無事、ライオンは本の中に納まった。 翌日・・。 気分を良くした少年は、『飛び出す動物図鑑』を持って学校に向かった。 授業中に熱帯魚を出す。 教室の中をプカプカ泳ぐ熱帯魚を見て、騒ぎ出す生徒達。 「授業中に何を騒いでいるんだ?!」 と、黒板に文字を書いていた講師が、生徒達を振り返って言った。 少年は慌てて熱帯魚を捕まえ、図鑑に戻した。 「貴様が原因か?」 教師は少年の事を良く思っておらず、その時も、少年の事を真っ先に疑った。 「貴様、ちょっと来い」 教師に呼ばれ、前に出て行く少年。 この教師に叱られるのは慣れっこだったが、ちょっと思い知らせてやろうと言う気持ちがあり、少年は図鑑を持ったまま前に出て行った。 「貴様と言う奴は・・」 教師が少年を前にしてブツブツと言い出した。 『また始まったよ・・』と思い、ため息を吐く少年。 「おい!聞いているのか!?」 教師が叫んだ。 少年はイラっとして教師を睨んだ。 「何だ、その態度は?ああ?!」 教師も少年を睨み返した。 生徒達は息を呑んで何が起こるかを見守っている。 (そろそろ黙らせてやるか) 少年がふいに図鑑のページを開いた。 ライオンのページだ。 すると、少年の背後にライオンが現れた。 「な・・何だ!?」 教師は驚いて後ずさりをした。 教室の生徒達も、皆が教室の一番後ろに避難した。 ライオンは教師を睨むと、身体を低くして、戦闘態勢に入った。 この時、少年はおかしいと思った。 ライオンは自分達を感知できないはずだ。 にも拘わらず、ライオンは教師を感知して、襲い掛かろうとしている。 まずい!! 少年がそう思った瞬間、ライオンが教師にとびかかった。 「うわっ!!」 教師はライオンに押し倒された。 鋭い爪が、教師の顔に食い込み、血が飛び散った。 少年は慌てて図鑑のライオンのページを、ライオンの頭に乗せた。 すると、ライオンは霧のごとく消え去った。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!