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「話し始めるのはどのタイミングでも構いませんよ。私は、あなたが夢の話をしている間は何も話しませんので、あなたのペースで自由に話してください」
「では・・」
男はようやく決心したようだ。
「夢の話をする前に一つ質問があります」
「何ですか?」
「あなたは、『水滸伝』の事をご存知でしょうか?」
「もちろん知っていますよ。『西遊記』、『三国志演義』、『金瓶梅』と並ぶ、中国の『四代奇書』の一つですね。『宋江』が中心となり、108の星が、強大な『国』と戦う物語です」
「そうです。私が見た夢は、まさに水滸伝みたいな話だったのです」
男は一度深呼吸をした。
そして、再び話し始めた。
「とは言っても、まだ108人揃っていなくて、人が大分増えたからパーティーをしようと言う事になったようで、私達が何と戦っているのかは分かりませんでした。私達がいるのは食堂で、たくさんの人が集まっていました。皆、自己紹介をしあったりして和気あいあいとしていました」
「そこには腕っぷしの強そうな人が多くいましたが、他にも、料理人がいたり、元警察の人がいたり、その警察の人が連れてきた泥棒もいました。何でも、鍵を開ける技術で、その男の右に出る者はいないと言う事で元警察の人が連れて来たとか・・」
「で、何故私がそんな所にいるのかと言うと、実は、私自身にもよく分からなかったのです。どうやら、リーダーに誘われて参加したみたいですが、私には何の取柄もありませんでしたので・・」
「ちなみに、リーダーはその場にはいませんでした。要するにその時間は、リーダーが戻るまでの時間を好きなように潰していろと言う事だったのでしょう」
男はここまで話すと少し間を置いた。
「私が見た夢はここまでです。内容自体が全く皆無なのですが・・。こんな夢でもよろしいのでしょうか・・?」
男は恐る恐る尋ねた。
すると、店主は微笑んで言った。
「もちろんです。むしろ、色々な所が謎めいていて面白いではありませんか。あなた方は何と戦っているのか?あなたは何故、リーダーに必要とされたのか?あなたは何故、そのメンバーに協力する事にしたのか?リーダーはどういう人物なのか?色々な疑問が出てきます」
「その通りです。ですが、それが分からないと話にならないのでは・・?」
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