ある少年の夢 1

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ある少年の夢 1

「ここか・・」 中学生ぐらいの少年が、ある建物の前に立って呟いた。 その建物の上の方に、白地に黒い文字で 『質屋』 と、大きな字で書かれていた。 しかもその下には 『あなたが見た夢、買います』 と、これまた大きな字で書かれていた。 (確かに、噂通りの建物だな) 少年は、自分が見た夢を買い取ってくれる店があるという噂を聞いて、ここにやって来たのだ。 (未成年でも大丈夫だよな・・?自分が見た夢を売るだけなんだから) 見た目はおとなしそうで真面目そうな少年である。 だが、何か、とてつもなく大きな意思を持ってここにやって来たように見える。 少年は覚悟を決めて、店の中に入って行った。 「いらっしゃいませ」 店主らしき男が小さな声で言った。 その男は、ドアの正面の椅子に座っている。 40代くらいの地味な男だ。 少年は店内を見回した。 見た感じは駄菓子がまるで置いていない駄菓子屋と言った感じで、ものすごく殺風景だった。 が、ある棚に小説が置いてあった。 『飛び出す動物図鑑』が7冊。 その下の段に、『煩悩にほえろ!』が10冊。 少年はその小説をチラッと見ただけで関心を失ってしまった。 どうやら小説には興味が無いらしい。 少年は椅子に座り、店主と向かい合った。 「あの~・・」 少年がすぐに言葉を発した。 「何でしょうか?」 「ここでは、自分が見た夢を買い取ってくれるそうですが、未成年でも大丈夫でしょうか?」 「もちろん大丈夫ですよ。別に、君の持ち物を買い取る訳でもありませんので、保護者の同意書とかも一切必要ありません」 「そうですか・・。良かったです・・」 少年はホッとため息を吐いた。 そして、再び尋ねた。 「あの棚に置いてある小説は、あなたが書いた物なのですか?」 「ええ、そうです。まあ駄作ですがね」 「そうですか・・」 「もっとも、君は小説には興味が無いようでしたが?」 「あはは・・。バレましたか・・」 「先ほどの君の動きを見ていれば当然分かります。小説をちらっと見た後は、一切見向きもしませんでしたからね」 「そうですね。確かに俺は小説には興味がありません。休みとかの暇な時間は、雨が降らなければいつも外に出ていますので・・」 「では、外でやる事に興味があると言う事ですか?」 「はい。俺はテニスに興味がありまして・・。と言っても、俺はまだ下手糞なんですがね」
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