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ユーカの足音が廊下に響いた。
カラヤの初仕事のフォローのため、念のためカラヤには秘密でユーカをイベントショーに行かせていた。
規模にもよるが、通常イベントショーの演出は魔法使い1人では回らない。だがこの仕事の内容をカラヤに伝えると、彼女は1人でやるのだと思い込み、特に文句も言わなかったのだ。
カラヤの魔法力を推し量るために、今回は敢えてそのままやらせてみる事にした。
「どうだった?」
夕焼けに赤く染まった窓から空を眺めたまま、ロアが今しがた部屋に入ってきたユーカに尋ねた。
「想像以上です。
敵味方全員の必殺技、会場全体への効果魔法など、完璧でした。これ、新人魔法使いなら数人は必要です。イベント担当者も、魔法使いが何人か客に紛れて発動してると思っていたようです。
それを1人で…。しかもカラヤちゃん、自分もステージに出てダンスしたり演技しながらですよ!
魔法だけに集中出来るならともかく・・・。
少なくとも私には多分無理です。」
「ぷっ、そりゃそうだろう。ユーカのマジマジョ? 想像するのも無理だ。」
「ちょっと、先輩!」
ユーカは幼い頃マジマジョシリーズを夢中になって見ていた事をロアには話していない。
当時ユーカは自分に魔法力があると判明したばかりで、将来自分も魔法使いになって敵と戦うのだと本気で思っていた。
「まぁ聞け。ハッキリしたことは、カラヤはかなりの使い手だという事だ。」
ユーカの頭の中で、様々な魔法を同時に発動しながらダンスも踊っていたカラヤの姿が蘇った。
「それは間違いありません。文系魔法だけでなく理系魔法も正確でしたから。」
「学校の成績が中の中というのも怪しいな。目立たないようにわざと手を抜いてるんじゃないか?」
「そうかもしれません。ただでさえ目立つ顔立ちなので。今回も素顔は出さないように本人に言っておきました。」
「美人すぎる魔法使い、なんて世間が喜びそうなネタにされるのは本人も避けたいだろう。」
ロアは考え込むように目頭を押さえた。
「さて、次の仕事は何にするかな…。」
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