第1話 廃棄命令

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第1話 廃棄命令

「君は、粗大ごみなんだよね」  眼前の男が壁に向かいながら言った。  感情のない、棒読みセリフだった。  粗大ごみ? 俺がか――。  いや、そんなわけはない。  俺は、営業用アンドロイドとして数々の企業に派遣され、忠実に任務を遂行し、結果を確実に残してきたはずだ。  それぞれの契約に対し、商談成功率100%という完全さが俺の誇りだった。  ミスは一度も犯していない……。  まさか、新型が開発されたのか?  そのような情報はインプットされていないはずだ。  では、何故ゆえに……。 「わかったね。直ちに、HA101廃棄倉庫に行き、指示を仰ぎたまえ」  その男はこちらを見るでもなく、業務的に言葉を伝えた。  何なんだこいつは?  感情パラメーターはゼロに近い数値だし、心拍数だってゆっくりで、ほとんど動いてないんじゃないか。  脳波は――。  ゲッ! 平坦脳波だ。  脳死状態の脳波じゃないかっ!  こいつ生きてるのか?
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