第2話 逃亡ランデブー

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「くそーっ! お前らなんてことをっ!」  髭男の他に二人、背の高い頬のこけた痩せ男と長髪の男だった。  痩せ男の手にはナイフ、長髪の男はレーザー銃が握られていた。 「あんたらもワンパターンだね。『中央経済特区』から脱走したアンドロイドは必ずここへやって来る。そいつらを捕獲するのがオレ達の仕事さ」  痩せ男がナイフを上下に振りながら喋った。 「何故、『中央経済特区』から来たってわかる」  俺は聞き返した。 「服だ。こんな小綺麗な服を着たアンドロイドは、ここにはいないんだよ。それと車だ。かなりの高級車だな」  痩せ男は俺を上目遣いに見た。 「そういうことだぜ。イッヒヒヒヒ。たまにプログラムがイカれちまうアンドロイドがいる。そいつらは逃走するんだ。とにかく逃げるのが好きなんだな。ヒヒヒヒ」  酔っぱらっている髭男はニヤけながら亜季子の胸を触った。 「止めろっ! お前の――、人間の汚い手で、亜希子に触るな!」  俺の感情は高ぶっていた。 「よくもまあ、アンドロイド風情が、怒りを表すなんてな。昔は、無表情で『はい』と『いいえ』しか言えなかったのになあ」  顔を赤く火照らせた髭男が言った。 「くっそーっ」 「おお、やる気かー」  髭男がこっちへ向かってくる。  俺は身構えた。 「人間の命令には」  痩せ男が気怠そうに呟いた。 「絶対服従です」  俺は固まった。  動くことすら出来なくなった。 「おい、こいつも縛れ、手錠もしておけよ」 「はい」  レーザー銃を持った長髪の男が、答えた。 「な、銃なんていらないんだよ。このセリフさえあればいいんだ」  痩せ男が唇を歪めた。 「じゃあ、どうして、ブンさんはナイフをもってるの?」  長髪の男が質問した。 「こうするためさ!」  ブンという痩せ男が、動けない俺の左腕にナイフを突き立てた。  ブアーっと潤滑液が噴出した。 「うっ……」  痛い、なんて痛みだ――! 「ケケケ、赤い色してやがる。そこまで人間に似せなくてもいいのにな」  赤ら顔の髭男が笑った。 「連れてけ、明日引き渡す」  痩せ男が、二人に命令した。 「今夜は、この女とお楽しみですか」  長髪の男が髭男に言った。 「カカカ、それが接待アンドロイドだわさ」  髭男は高らかに笑った。
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