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「くそーっ! お前らなんてことをっ!」
髭男の他に二人、背の高い頬のこけた痩せ男と長髪の男だった。
痩せ男の手にはナイフ、長髪の男はレーザー銃が握られていた。
「あんたらもワンパターンだね。『中央経済特区』から脱走したアンドロイドは必ずここへやって来る。そいつらを捕獲するのがオレ達の仕事さ」
痩せ男がナイフを上下に振りながら喋った。
「何故、『中央経済特区』から来たってわかる」
俺は聞き返した。
「服だ。こんな小綺麗な服を着たアンドロイドは、ここにはいないんだよ。それと車だ。かなりの高級車だな」
痩せ男は俺を上目遣いに見た。
「そういうことだぜ。イッヒヒヒヒ。たまにプログラムがイカれちまうアンドロイドがいる。そいつらは逃走するんだ。とにかく逃げるのが好きなんだな。ヒヒヒヒ」
酔っぱらっている髭男はニヤけながら亜季子の胸を触った。
「止めろっ! お前の――、人間の汚い手で、亜希子に触るな!」
俺の感情は高ぶっていた。
「よくもまあ、アンドロイド風情が、怒りを表すなんてな。昔は、無表情で『はい』と『いいえ』しか言えなかったのになあ」
顔を赤く火照らせた髭男が言った。
「くっそーっ」
「おお、やる気かー」
髭男がこっちへ向かってくる。
俺は身構えた。
「人間の命令には」
痩せ男が気怠そうに呟いた。
「絶対服従です」
俺は固まった。
動くことすら出来なくなった。
「おい、こいつも縛れ、手錠もしておけよ」
「はい」
レーザー銃を持った長髪の男が、答えた。
「な、銃なんていらないんだよ。このセリフさえあればいいんだ」
痩せ男が唇を歪めた。
「じゃあ、どうして、ブンさんはナイフをもってるの?」
長髪の男が質問した。
「こうするためさ!」
ブンという痩せ男が、動けない俺の左腕にナイフを突き立てた。
ブアーっと潤滑液が噴出した。
「うっ……」
痛い、なんて痛みだ――!
「ケケケ、赤い色してやがる。そこまで人間に似せなくてもいいのにな」
赤ら顔の髭男が笑った。
「連れてけ、明日引き渡す」
痩せ男が、二人に命令した。
「今夜は、この女とお楽しみですか」
長髪の男が髭男に言った。
「カカカ、それが接待アンドロイドだわさ」
髭男は高らかに笑った。
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