第1話 廃棄命令

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 廃墟の町の一画に錆ついた巨大ドームが見える。  HA101廃棄倉庫だ。  朽ちかけた門を潜り、玄関ドアに向かった。中に入ると、受付嬢が一人座っていた。  彼女の指示通り、右手の廊下の突き当りの研究室の中へ入った。  男がこっちを向いて立っていた。  ――こいつはさっきの平坦脳波だ。  何故、ここにいる?  俺より先に来たというのか? 「遅かったな。寄り道でもしてたのか」  感情のない、棒読みセリフ。  バカな。そんなに早くは来れない……。  もしかして、こいつもアンドロイド?  いや、俺のスキャンでは『人間』と認識していたはずだ。  近道でもあるのだろうか……? 「AAA00265E、到着しました」  一礼をした。営業用アンドロイドは敬礼をしない。 「お前からデータを取り出す。そこのベッドに寝ろ」 「はい。了解しました」  人間には逆らえない。俺は素直にベッドに寝転んだ。  すぐに強い重力を感じた。  このベッドには電流が流れている。それによりベッド自体が磁石となり、磁気が発生し、俺を拘束した。  もう動くことは出来ない……。  ただの金属の塊。  廃棄される無用の粗大ごみ。  それが俺、本当の姿なんだ。  意識が薄れていく……。  すでに辺りは闇の世界だ。  暗黒の宇宙空間に彷徨っている俺がいる。  何か聞こえる。  あの平坦脳波の声だ。 「だめだね、停電だよ。自家発電が可動しない。故障しているよ。電力不足だね。二体も同時に廃棄処分したから負担が大きかったね。復旧を急がないとだめだね……」  棒読みセリフ――。  俺の意識が戻っていく。  身体を拘束していた磁力はすでに無くなっていた。  だが研究室は真っ暗で、何も見えない。ベッドから起き上がり、手探りでドアを開けた。キーロックはされてなかったらしい。  廊下の窓ガラス越しに光が入ってくる。外は曇り空のようだ。  平坦脳波は?  停止していた。ピクリとも動かない。元々生きてるのかわからない男だったが、どういうことだ。スキャンしてみた。  出来なかった。何も認識出来ない。  データを抹消されたせいかもしれない。  とにかく外へ出よう――。
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