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俺達は玄関に向かった。
扉を開けた瞬間、凄まじい風が中に飛び込んできた。ドアが思わず押し戻された。
「そういや、台風が来てるって、情報が入ってたわ。それもかなり大型なんですって」
「本当に? 俺は台風情報なんて受信してなかったよ。廃棄処分だから、もう送られてこなかったのかな――」
「とにかく風力がかなり強くて、観測史上最高を記録してるって、ことらしいですよ」
「俺が来るとき、そんなに風って強くなかったけど。――まあ、ほとんど、地下道路を電車で移動してたから気が付かなかったのかもしれないけど。いや、もしかして、ほとんどの機能をすでに停止させられていたのかもしれない」
彼女が気の毒そうに見つめる。
「それより、外は危険だよ。どうする」
「地下道路から出ましょう」
「でも停電中だから電車移動は無理なんじゃないかな」
「私が乗ってきた車があるはず。充電式だから停電でも大丈夫。すぐに行きましょう」
急ぎ駆けた彼女に、
「君の頬っぺ暖かいね」
といった。
「だって、特1ランクのアンドロイドですから」
特別1級――外見、皮膚組織に至るまで、より人間に近づけた特殊タイプのアンドロイドだ。
ヒューマノイド型とも呼ばれ、見た目は人間と見分けがつかない――。
「そっか」
即、納得した。
彼女が地下駐車場へ続く階段を下りた。俺も後へ続く。
――けど、あの平坦脳波の男。どうして、停電と同時に機能停止してたんだろう?
待てよ、廃棄倉庫に行けと命令した男は『人間』と認識していた。
だからその時はまだ、俺の機能は正常だったはず。
すると俺のスキャン能力も、ここへ向かう間に削除された可能性がある。今は殆どの能力が使えないから間違いないだろう。
ここにいた平坦脳波の男はアンドロイドで、ここの電力で動いてたということか……。
何れにせよ今は『HA101廃棄倉庫』からの脱出が先だ。
廃棄処分は絶対イヤだ。納得がいかない。
一度は従ったが、もう二度と、人間のいうことなんてきかない!
「俺は、AAA00265E。営業用アンドロイドだ!!」
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