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「あった、全員分ある」
お父さんより早く箸の所在を確認したお兄さんは、箸の束を引っ張り出すと席に置いていく。
お兄さんは高校一年生で、家族の中で一番背が高い。運動神経が良くて、バスケ部に所属している。中学では全国大会に出場したこともあるがプロは目指しておらず、家から最寄りの高校に進学した。
勉強は苦手だが明るい人柄と高身長、引き締まった体で異性からの人気は高いと思う。ちなみに彼女はまだできたことがない。
両親が勉強等に煩くないからか反抗期らしい言動は一向に見られないまま。
僕とはそれなりに年齢が離れていることもあり喧嘩は滅多にしない。たとえ喧嘩をしても力にものを言わすようなことはなく、だけど僕に口喧嘩で勝つことはできないようでいつもお兄さんの方から折れてくれる。
狭い勉強部屋兼、寝室を二人で共有しているけれどそれを嫌だと思ったことがないのは、僕がお兄さんを慕っているからだ。
そんなお兄さんは幽霊や宇宙人を信じていて、都市伝説やオカルトに目がない。一方でかなりの小心者なので自分から心霊スポットに行く勇気はなく、テレビが心霊特集をしていると喜々として録画するくせに鑑賞時は必ず僕を隣に座らせる。そしてその夜は僕をトイレやお風呂に付き合わせ、就寝時はお兄さんが寝るまで会話を強要させられる。
好きなのか、嫌いなのかよく分からない。浴槽もそれほど大きくないので、そろそろ何とかしてほしいものだ。お兄さんのお茶目な一面だと言い聞かせて付き合ってはいるものの、未だ僕には理解できない心境だった。
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