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◯月×日
「ねぇ、お父さん」
今年の夏で14になる娘が、なんの脈絡もなく、唐突に声をかけてきた。
ぽろり、と手にしていた枝豆が、一粒皿に落下する。
その過程を目で追い、落ちた豆粒を私はしばらく見つめていた。そして、ゆっくりと指先で拾い、口へと運ぶ。
もきゅ、もきゅ。柔らかい音に、心を救われた。そして、勇気も湧いた。
頑張れ、と内心叫びながら、私はそっと視線を上げる。そして、呼び掛けて以降、音沙汰なしの娘を盗み見た。
彼女は、ソファーに腰かけいた。そして悲しいことに、こちらは全く見ていない。視線は一心にテレビへと注がれている。
「ど、どうした」
声は裏返り、口籠る。情けないが、心臓が爆発しそうだ。
というのも、彼女とまともに話すのはおおよそ一年ぶりなのである。反抗期というか、拒絶反応とでも言うべきか、思春期特有のアレなのだ。
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