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「お誕生日おめでとぉお……ぎぃにゃあああああ!」
軽くポーズまで決めていた猫耳少女は、俺の姿を見た途端みるみる笑顔をひきつらせる。化け猫じみた叫び声をあげながら後ずさった。
「なななななん、で男!? あんた、誰?」
「……はぁ? 佐藤だけど」
「名前じゃないわよ! い、いも、妹とどんな関係かって聞いてるの」
「芋とどんな関係って……。強いて言えば食べる方と食べられる方……?」
「たっ、食べる!? なんて卑猥なことを言うの」
青ざめていた彼女は、今度は耳まで赤くしていく。
あまりの訳の分からなさに、俺は首を傾げて彼女をじっと見つめた。
なんなんだこの猫耳女は。というより、なぜ昨日実家から芋が届いたことを知っている。
まさか、俺のストーカー? こんな可愛い子が俺の家の宅配を見張っていたってことか?
「見張るなんて、そんなの必要ないのに」
「美春なんて必要ない!? あ、あんた、食べておいてよくもそんなことを。遊びだったの?」
「遊び? いや、親が食べろっていうから」
「親が言ったの!? なんて家……信じらんない……」
「普通だと思うけど。まあ、俺はあんまり好きじゃないけど、親父が食べろってうるさくてさ。男だろ、ってふざけて生で食わそうするんだよ。ついムキになって生で食べ返してやったら親父驚いてたなあ。あっはっはー」
「ち、ち、父親と、ちちおやと、ち……ち……」
色々とパンクしかけた様子の彼女は、二、三歩後ろによろめき、次いで猫耳を投げ捨てた。
「美春が、美春がこんな変態だったなんて。わああああ」
アパート中に響く声で叫んだ彼女は、逃げるように走り去っていく。
「あ、待って君! 確かに見張る行為は変態的だけれども!」
「あれ、お姉ちゃんじゃん? どうしたの――」
隣の家のドアが開き、顔を出した女が俺を見て不思議そうに首を傾けた。
「あの、今うちの姉と話してませんでした? どんな関係なんです」
「ストーカーする方とされる方の関係です」
「……え?」
その後、全ての誤解がとけるまでかなりの時間を要したのだが、俺は猫耳少女を食べるべく頑張ったのだった。
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