ルール ~その1~

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でも、待てよ。 考えてみると逆に今がチャンスなのかもしれない。 小さなこの温泉ホテルは今回うちの会社の貸し切りだ。 大広間では宴会真っ最中。 只今各部署対抗のカラオケ大会絶賛開催中。 腕時計に目を落とす。 もうすぐで宴会の大トリである社長と専務の因縁のカラオケ対決が始まる。 そこを抜けてわざわざここ迄は誰も来ないだろう。 漸く開き直って売店でいつものブルーを基調にした丸いカップのアイスクリームを買った。 無料通話アプリで彼女にメッセージを送る。 『エントランスホールでアイスクリームを溶かしながら待つ』 僕はソファーに浅く腰掛けた。 目の前には360度オープン型の暖炉。 薪が時々パチンと爆ぜる。 その度に僕の心臓まで爆ぜているように膨張する。 暖炉の縁にはマシュマロと金串。 『ご自由にお召し上がりください』のメッセージが添えられている。 緊張で、そんな気分にはなれないけれど彼女にそれを食べさせてあげたいとは思う。 彼女焼きマシュマロ好きだし。 そんなことをぼんやりと思いながら買ってきたばかりのカップアイスをマシュマロの隣にそっと置いた。
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