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木のヘラでは一度にあまりすくえない。
これ全部食べるまで、どうか誰も来ませんように。
溶け掛けの柔らかくなったアイスクリームをすくって一口目を彼女に差し出す。
照れ笑いしながら彼女も小さく口を開けてそれを受け入れた。
「おいし」
「……で、返事は?」
「ダメ。まだ教えない。私とっても恥ずかしかったんだから。それに分かるでしょう?本当に怒ってるんだからね」
「分かってる。ごめん」
「そもそもね、あんな大事な事お酒の席で言うべきじゃないでしょう?」
「ごめん。それに関してはすごく反省してる」
「素直でよろしい。とにかくプロポーズの返事は後。これ全部食べてから」
「え?これ全部?本当に?そんな事言ってたら誰か来ちゃうよ」
「別に良いじゃない。大丈夫だよ。さっきあれだけ恥ずかしい事やった後だもん。もうこれくらい軽い軽い。ね?」
前から薄々感じていたけれど、やっぱり彼女は小悪魔だ。
このまま、もし結婚を受け入れてくれたとしたら、絶対に僕は尻に敷かれているだろうなあと思い、はっと気付いた。
今現在、既に尻に敷かれていた事に。
了
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