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胸踊るキャンパスライフは桜のトンネルから始まった。
大学の入学式、わたしは桜吹雪の中に立っていた。辺り一面、春の優しい風に舞った花びらに染められている。ここが川面なら、花筏といった素敵な光景が目の前に拡がっていた。
桜ピンク色はこれから新生活を始める者に昂揚感と力を与えてくれるから、不思議。
ドキドキする。このワクワクは、まるで小さな子供。これが、新しい世界に踏み出すってことなのかな。
パパとママの反対を押しきって猛勉強して女の子だけの学園から飛び出したわたしは、生れた時からずっと一緒の幼馴染と同じ大学に入学した。そう、共学の!
でもそこは、目がチカチカするくらい、あまりにも刺激的な環境でした。入学式、門をくぐって大学構内に入ったわたしは、今までいた「ごきげんよう」のシスターが出迎えてくれる世界とはまるで違う世界に、気後れしてしまった。
サークルの勧誘?
新入生の歓迎?
当然ながら、父兄とはあきらかに違う若くてエネルギッシュな男の人達が溢れ賑わうキャンパスに圧倒され、立ち尽くしてしまったわたしは、迷子になった。
入学式に一緒に来てくれたパパとママと完全にはぐれてしまった。
「どうしよ、パパー、ママ―?」
初めて外に飛び出した子供みたいにおろおろと駆けだしたわたしは、緊張もあって足がもつれ、こともあろうに、転んでしまった。
あ、膝から血、出てる。痛さよりも、顔を上げられないくらいの恥ずかしさが込み上げて涙が出そうになった時。
「何にもないとこで転ぶなよー」
頭上から優しい声が振ってきた。顔を上げたわたしの心臓が、ドキンッ!と跳ね上がる。
真っ黒に日焼けして白い歯を見せて笑う、背が高くて、まるで雑誌やテレビから飛び出してきたような男の人が前に立ち、少し前屈みになってわたしの顔を覗き込んでいた。
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