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舞い散る桜の花びらと同じような桜色のシャツを着た彼は、春の柔らかな風に黒い髪がさらりと揺れ、絵のようだった。
お、男の人が、こんな色のシャツ着て、似合うなんて、ホントに、モデルさんかも?
男の人を知らないわたしにとって刺激強過ぎ、素敵すぎる殿方の突然の出現に頭の中はパニック寸前だった。
ど、どうしようっ。
地べたに座り込んだまま、わたしはあわあわおろおろとしてしまう。男の人に免疫のないわたしには到底まともな受け答えなんて出来そうになくて、もはや完全に挙動不審。
そんな怪しい新入生に素敵殿方はクスクスと笑い出した。
「そんな恰好でいつまでも座り込んでるわけにいかねーだろ。ほら、立てるか」
顔を上げて目が合った瞬間、心臓が壊れてしまうんじゃないかしら、ってくらいドキーン! となった。
手が差し伸べられたけれど戸惑い躊躇うわたしに彼はまた、ほら、と促した。わたしは恐る恐る手を伸ばして、差し出された彼の手に掴まった。
大きくて、固くて、温かい手。勿論、わたしが初めて触れる男の人の手だ。
「よ……っと!」
フワッと身体が浮いた。彼が、私を一瞬で引っ張り上げて立たせてくれたのだ。
「ああ、膝から血、出てるな。医務室連れて行ってやろうか?」
その人は私の膝を見て、心配そうな顔をした。わたしとは、頭一つ以上違う背の高い彼に顔を覗き込まれて狼狽えた。
「あっ、と、いえっえと……っ」
だめ、まともに顔、見られない。顔、上げられない。頬が火照ってる。わたし、今絶対に真っ赤になってる……!
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