第1話 ~星のにゃんこ様~

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. ピンクババアは俺の顔を見るなり、満面の笑みで厚化粧にヒビ割れを作り、今日も朝っぱらから“ピンク”たる由縁を持ちかけてくる。 「あらヨウちゃん、若い子は元気ねぇ。 きっとあっちのほうも、元気過ぎて困ってんじゃないのぉ? 口で2千……いや、千円でいいわよ。 ヨウちゃんには特別サービスしちゃう」 ヒジキみたいな付け睫毛でウインクされたところで、もちろん俺が承知するはずもなく、今日も苦笑いで後退る。 全くこのバアさん、何とかして食っていかなきゃならないのはわかるんだけど、 毎度毎度俺を見るたび、指で作った筒を咥える仕草で言い寄ってくるのは勘弁してほしい。 けれどもこんな困ったバアさんでも、俺が決して邪険にあつかえないのは、ここの人達の生きる事への必死さを知っているから。 10円玉1枚の価値、パンひと切れの価値──そんなちっぽけな価値にしがみつき、がむしゃらに生きようとする姿は、何か尊敬すらしてしまう。 そんな人達の姿に触発され、これまでの甘えた自分を省みることができたんだと思う。 「バアちゃんゴメン。 今俺、急いでるんだよ」 「大丈夫、アタシのテクはすごいのよぉ? ヨウちゃんなんか、3分ももたないから」 「友達が迎えに来てるんだよ。 マジで時間ないから」 「ほら、こうして言い合ってるうちに、ピュピュッと終わっちゃうから」 「ちょっ……ちょっと待って! あっ、ダメッ、触らないでっ! あ、あぁ………」 “ガンッ!” と鳴った音が、俺のズボンを半分下げかけてたバアちゃんの手を止めた。 あれは今日何度か聞き覚えのある、俺の部屋の外壁に石を投げられた音。 それに続いて上がったのは、この春空によく通る、女の子の声だった。 「おい、ヨウタッ! 3分まで、残り30秒だぞっ! 1秒でも遅れたら、町内10周だからなっ!」 .
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