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そうそう。
この地区の数少ないまともな娯楽の1つに、卓球があった。
今でこそだいぶプレイヤー人口は減ったみたいだけど、昔は住民総出で卓球ブームに湧いたらしい。
ヒミちゃんが言うには、この地区にとっての卓球は、単なる娯楽やスポーツ競技ではなく、“希望の象徴”なんだそうだ。
なぜそうなったのか、まだまだここの歴史に疎い俺にはわからないけど、卓球がきっかけで拾ってもらったのもあるんだから、少しでもみんなの期待に答えたい。
卓球場という名の、材木屋の倉庫を改修した建物は、アパートから500メートルほどの川沿いにあった。
ヒミちゃんは本当に卓球が好きな子で、道すがらにも、俺の腰の回し方が足りないとか、球を最後まで良く見てないとか、身ぶり手振りを加えて指導してきた。
ハキダメ通りでは俺みたいに若いのは少ないらしく、ヒミちゃんも年の近い友人が出来て喜んでると、松さんが言っていたのを思い出す。
友人と言うよりは、彼女からしたら子分みたいなものかもしれないが……
何にせよ、いつも明るく快活なヒミちゃんこそが、俺に一番元気をくれた張本人かもしれない。
コーラを押すと烏龍茶が出てくる50円自販機を曲がると、田舎のコンビニほどの大きさのボロい建物が見えてくる。
ガムテープで補修してある割れた窓の下には、【東木乃根区 卓球センター】の看板が、少し斜めに掲げられていた。
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