第1話 ~星のにゃんこ様~

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. 「よっし、今日もいっちょやるかぁ!」 やる気満々で入口へ向かったヒミちゃんだが、ふと立ち止まると、訝しげな顔を俺に向けてきた。 彼女の言いたいことは、何となくわかった。 他のメンバー達が先に練習してると聞いていたのに、ここまで来ても、いつものピンポン球の音が聞こえないのはおかしいのだ。 鍵は開いてるようだから、まだ来てない訳ではなさそう。 「気合いの足りない連中が、まだいるようだね」 ふん、と鼻息を吹いたヒミちゃんが、すごい勢いで卓球場に雪崩れ込んだ直後、 中からは、このボロ小屋が吹き飛びそうなほどの大声が上がった。 「コラァァーーッ!! 何サボってんだおまえらっ、そんなんで勝てると思ってんのかっ!」 苦笑しながら後から入った俺に、先にいた2人のメンバーが目線で助けを求めてくる。 2人は1台ばかりの卓球台の上に、柿の種の袋を広げ、呑気にお茶を飲んでる最中だった。 「あぁ、もうっ! 神聖なる卓球台は、茶飲みテーブルじゃないんだよっ!」 「固いこと言わんといてな、ヒミちゃん。 ほら、英語でテーブルテニスって言うくらいやから、やっぱりテーブルやん」 「うるさいシャチョウ、いいから早く片付けてっ!」 ヒミちゃんに怒鳴られ、シャチョウはしぶしぶ柿の種を片付け始める。 この頭頂部の薄くなった腹の出たオッサンは、みんなから“シャチョウ”と呼ばれていた。 実際、廃棄車の部品を東南アジアなんかに売る商売をやってるらしいが、ここの住民である以上たいして儲かってないんだろう。 もしくは、相当な額の借金があるとも聞いているから、いくばくかの儲けは全て返済に消えているのかもしれない。 卓球台を丁寧にタオルで拭きながら、ヒミちゃんはブツブツと説教を続けた。 「だいたい、あの大会に出場しようって言ったのシャチョウだよね? 例えどんな境遇でも、何か目標を持つのは大事なことだ、とか何とか言ってたくせに」 大会と言うのは、毎年市の主催で行われる市民卓球イベントで、男女混合の団体戦でトーナメントが組まれる。 どちらかと言うと、楽しくワイワイ盛り上がる交流目的のお祭りだが、たまにヒミちゃんみたいなガチ勢も、一定数いることはいる。 .
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