第1話 ~星のにゃんこ様~

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. 持ち前の温厚さでチンピラを落ち着かせたシャチョウは、そのいかつい肩を軽く叩き、更なる説明を促す。 イナズマさんはムスッとしながらも、ポツリポツリと語りだした。 「ミミ子だけじゃねぇんだよ。 ヨウタは新参だから知らねぇだろうが、前にここいた吉川って男。 何やらせてもどんくさい奴だったけどよぉ…… あいつも星の猫を撫でた途端、急にいい会社の正社員が決まっちまって、 ここを出ていったんだ。 ルミっていうAV女優崩れの女もな、あの猫を撫でてすぐ、絶縁されてた親と和解できて、実家に帰ってったよ。 他にもいろいろあるが、俺が良く知ってる人間がこいつらだ。 ここ1年で立て続けにこうまで見せられちまうと、流石に偶然とは思えなくてな。 あの猫は本当に、俺たちをドン底から救いにきた神の化身としか思えねぇんだよ」 何時になく真面目くさったイナズマさんの言い方に、もはや俺は吹き出すことも出来なくなっていた。 願いを叶える、神の猫? そんなことって、本当にあるんだろうか? そう言えば初めてここへ来た雪の夜、点滅する街灯の下で、一匹の猫を見たのを思い出した。 あれも確か白猫だったけど、果たしてそれがそうなのか、暗いのと緊張してたのとでよくわからない。 イナズマさんの前では言いにくいが、ここにいる者達は、もう自分の力じゃあ、どうやったって人生を切り開けなくなった奴らばかり。生活保護を需給してる者も多い。 そんな人達が人外の存在に夢を求めたくなる気持ちは、俺にだって理解できる。 でもそんな非科学的なことなんて到底あるわけがないんだから、つまりこれは、辛い境遇で生きる者の現実とう…… 「そんなのただの、現実逃避だよっ!」 俺より先に口に出したのは、ヒミちゃんだった。 イナズマさんは血走った目を今度は彼女に向けるが、ヒミちゃんはヒミちゃんで相当な利かん坊だ。 「神の猫だかなんだか知らないけどさ、そんなファンタジーはネット小説にでも任せておいて、アタシ達はもっと現実に迫った卓球大会に集中しようよ」 イナズマさんがあまりヒミちゃんに噛みつかないのは、相手が女の子と言うのもあるだろう。 しかしそれよりも何よりも、ヒミちゃんの祖父さんの松さんには、イナズマさんと言えども決して頭が上がらないのだ。 .
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