第2話 ~伝説の英雄~

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. 俺とヒミちゃんは、ニョロさんに事のあらましを説明した。 “星の猫”の話はニョロさんには初耳だったらしいが、次第に彼女のメガネがギラギラと輝きだし、ズンズン身を乗り出してくるのがわかった。 「ほほう、願いを叶える不思議な猫ですか。実に興味深いですね。 わたし、そう言ったカルトめいた話が大好物なのです」 これはマズい人に話してしまったと、ちょっと後悔。 これ以上この話を続ければ、ニョロさんまで煮干しを持って彷徨きかねないじゃないか。 ヒミちゃんも同意見だったらしく、慌てて話題を変えにかかるが…… 「そ、そんなのくだらない都市伝説だよ。 そんなことよりニョロさん、サーブどれか1つ伝授してよ」 ヒミちゃんの声などまるで聞いていないニョロさんは、メガネの真ん中を指で抑え、不意にこんなことを言った。 「しかし……猫……星……ハキダメ通りに希望を与える存在…… ヒミちゃん、何だか聞き覚えありませんか?」 「………え?」 「それらのワードは、全て星野選手に関連しているとは思いませんか?」 数秒ポカンとした後、みるみるうちに目玉と口をひんむいていくヒミちゃん。 星野選手って、どこの誰だか俺にはさっぱりわからないけど、明らかにヒミちゃんは知っているようだ。 女2人が目と目で会話し合う中に、除け者の俺が割って入る。 「ねぇニョロさん、星野選手って誰?」 「え、ヨウタさん、星野選手を知らないんですか? この地区に住んでいながら、彼を知らないなんて非国民ですよ」 「だって初めて聞いたもの。 そんなに有名人なの?」 「星野選手はね、この地区の英雄なんです。 卓球を通して、この荒みきってたハキダメ通りに、希望の光を与えた偉大なる人物ですよ。 ここの住民は徳川家康を知らなくとも、彼の名前は全員知っていますよ」 そう言えば前にヒミちゃんが、卓球はここの希望の象徴だって言ってたのを思い出した。 それはきっと、その星野選手って人に関係してるに違いない。 .
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