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ハキダメ通りには、公園と言う名のただの空き地がある。
猫の額ほどのスペースが金網で囲われており、雑草生い茂る中に廃棄されたドラム缶や一斗缶が遺跡のように点在している。
明らかに何かしらの業者の資材置き場だったように見えるが、それでも一応ベンチが1つ設えてあるから、住民達は公園だと言い張っているのだ。
そんな公園に人だかりが出来ていることに気づいたのは、卓球場へ向かう途中だった。
何だろう?と目を凝らしているうち、その輪の中心から覚えのある関西弁が聞こえてきたものだから、思わず俺も近寄っていた。
関西弁はやっぱりシャチョウのものだった。
シャチョウは何か冊子のようなものを手に掲げ、取り巻く住民達に向かって声を張り上げていたのだった。
「ええかおまえら、この【星の猫★完全攻略マニュアル】にはな、その猫の特徴が詳しく書いてあるんや。
これを読めば、他の野良猫と間違うこともあらへん。すぐに見分けがつくようになるわ」
「ふん、そんなもの読まなくたって、額に星の形がある猫なんてそうそういないわよ。見りゃあ、すぐわかるでしょうが」
「それだけやないで!
後半部分には星の猫を見つけるためのいろんな方法が載ってんやが……
それを書いたのは、なんと、あのペット探偵の藤原さんやっ!」
「誰よそれ。それにペット探偵て何さ?」
「ペット探偵知らんのかいな?
ペット探偵っちゅうのはな、ペットの犬や猫が行方不明になった時、依頼を受けてそれを探す──そんな職業があんねん。
野良猫の生態やら縄張りから割り出す行動範囲やら、動物のあらゆることを熟知しとるプロフェッショナルやで!」
「おぉ……そんな藤原さんが?!」
「せやで、この【星の猫★完全攻略マニュアル】が、今ならなんと、たったの500円や!」
「ふざけんなっ!
そんなコピー用紙をホッチキスで留めただけのペラペラに、500円もはらってられるかよ。
ぼったくるのもいい加減にしろや、シャチョウ」
「あー、500円が高い思う奴は買わんでええわ。一生このハキダメで、水っぽい雑炊啜ってたらええ。
せやけどな、その500円が、やがて500万にも化けるかもしれんのやで。
それを理解できる奴だけ買うたらええわ」
「ご……500万……だと?」
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