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「あら。いらっしゃい。嵐子ちゃん」
事件から数日後。
『キュベレー』の店内で、今日も、薫子が麗しい微笑みをたたえて、颪を出迎えた。
「今日は、嵐子ちゃんに、紹介したい子がいるの」
楽しそうに微笑む嵐子の背後。隠れるように座っていた人影が、顔をあげた。
「せ……先輩?」
薫子とは真逆の、白いロリータ服に身を包み、頬を真っ赤に染めた少女は、上目遣いに颪を見つめた。
「はーッ? 神薙ッ! その格好……なんでお前が此処に居るのッ!」
「なんでって……そりゃ……」
恥ずかしさに悶え、プルプルと震えながら、神薙は恨めしそうに薫子を指さす。
「石井さんが……」
は……?
「もー、嵐子ちゃんってば、全然気づいてくれないんだから。薫子、悲しい!」
一瞬の沈黙の後、颪は言葉にならない叫びをあげた。
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