女装刑事の〇〇奇譚

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 よく解らない状況の中、突然、画面を見ていた若頭が、ちぃッと、舌打ちをした。 「ダメだ……捕捉(・・)されたッ!」 「えッ……」  言うが早いが、男は立ち上がる。ラップトップをたたんで小脇に抱え、隠すように置いていた、長い棒状の何か(・・)を、颪に投げつけた。  それは、一振りの、日本刀──。 「あーッ! 銃刀法違反ッ!」 「借り物で一応登録(・・)されてるモノですが、文句は後でちゃんと聴きますよ! 生きていたら(・・・・・・)ね!」  ドォンッ!  若頭の言葉と同時に、轟音が響いた。  と、同時に、ガラガラと鉄骨が音を立てて崩れる。 「ぎゃーッ!」  日本刀に抱きつきながら、颪が叫んだ。  巨大な黒い『塊』。ヒト型に見えないこともないが、薄暗い中、さらに濃い闇を纏った『何か』が、三人に対峙する。  無言で身構える神薙に対し、颪は指を指しながら、若頭に問う 「何アレッ! なんなのッ!」 「昔、この場所には、ある大名屋敷があったそうです」  むかしむかし。江戸時代初期。  権力争いに負けて改易され、恨みを残して死んだ男が、かつて住んだ、大名屋敷。     
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