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「まったく、いい迷惑ですよ。地鎮祭も形だけ。祠も撤去で、妙なモノを呼び覚ましておいて、たまたま通りがかった全く関係ないウチの者が被害にあって、挙句の果てには内部抗争の冤罪かけられて……ねぇ? お膳立てはしておいたんですから、落とし前はちゃんとつけろっていうか、しっかり働いてくださいよ。悪魔サン?」
にっこりと笑う男に、目を見開き、そして、警戒するように、神薙が問いかけた。
「あなた、誰ですか」
身構える神薙に、きょとんと、男が虚をつかれた顔をする。
「え? あぁ。そういえば、自己紹介がまだでしたか。石井と申します。お久しぶりです。安曇君。あ、いいえ……そう。そういえば君は、オレと会っていたことを、憶えてないかもしれませんねぇ」
石井と名乗った若頭は、神薙に向かって優雅にお辞儀をするが、同時に振り下ろされた黒い影の攻撃を、ひらりと避けた。
「オレが会ってたのは、アキト君、の、方でしたから」
「な……」
神薙がぎょっと、再度、目を見開く。
どういうことだ? 眉間にしわを寄せる颪を、不意に石井は突き飛ばした。
黒い影の手に、颪が握る日本刀とは比較にならないほど大きな刃が握られ、月の光で銀色に輝く。
それが一気に振り下ろされて、今まで立っていた地面が抉れ、土埃が舞った。
神薙がその攻撃に巻き込まれ、吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。
「神薙!」
「彼なら、大丈夫です。頑丈ですから」
はぁ? 颪の疑問を打ち消すように、呻くような声が響いた。
「ッ痛ぅー」
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