女装刑事の〇〇奇譚

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 よろよろと、神薙が起き上がる。  頭のどこか切ったか、だらりと一筋の太い線が、顔を染めていた。  が、なにやら少し、様子がおかしい。  束ねていたゴムが切れたか、広がる長い髪を荒々しくかきあげ、顔に流れる血を拭った。  その仕草に、少女のような繊細さは、微塵も感じられない。  口の中を切ったか、砂利が入ったか──神薙がペッと唾を吐き出した。 「改めて、おひさしぶりです。それでいて、出てくるのが少々遅いですよ! アキト君」 「石井──って、テメェ、カオルかッ!」  ピンポーンと、軽い調子で、石井が答えた。 「ついでに言うなら、天国の門(Heaven's Gate)が一人、聖杯のⅨ(Cup Of Nine)()と違って、オレは少々情報通なだけの、いたって普通(・・)の人間ですから。避けるしかできませんので、あとは頼みましたよ」 「それを、早く、言えっつーのッ!」  再度振り下ろされる銀の巨大な刃を、あろうことか神薙は素手で──しかも片手で受け止め、そしてそれを、おもいっきり握り潰した。 「んな──」  砕けた刃がキラキラと輝きながら、花弁のように散り、ぎょっと颪は目を見開く。     
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