女装刑事の〇〇奇譚

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「まったく……どうしたモンだかね……コレ」  いつものスーツ姿ではなく、ラフな格好の三剣が、腕を組んでため息を吐いた。  神薙のおかげで何とか黒い化物は退治されたが、工事現場は惨憺(さんたん)たる状況で、人間の手では動かすことが不可能であろう資材が、至る所にバラバラと散乱し、そこらじゅうの地面がぼこぼこと抉れている。 「だってケーラ……」 「だってじゃありませんッ! アキト! 加減を考えなさいって、いつも言っているでしょう!」  満身創痍の神薙に、容赦なく三剣がデコピンをお見舞いした。  確かにそのやりとりは、息子を叱る、母親のようである。 「おば……いえ、警部補殿。彼も頑張ってくれたんです。抑えてください」  一瞬、女性に対する呼び方として、とんでもない言葉が石井の口から聴こえてきて、颪はぎょっと目を見開いたが、特に三剣は気にした様子はない。 「まったく、なかなか難しいわねぇ……」  ため息を吐きながら、三剣が「実は……」と口を開いた。 「石井(この子)の父親が、高校の時の同級生だったのよ……私。アイツが再婚するまで、ホント目と鼻の先の近所に住んでたんで、カオル君にとっては間違いなく、「同年代の子のお母さん」とか、「近所のおばちゃん」だし」  まさかアイツが玄任会の会長とか、今でも信じられないんだけど……と、三剣は頭を抱える。  玄任会がシロ……と、早々に彼女が断定した理由は、どうやらこのあたりから来ていたのか……。 「あの……警部補……」  颪の何か言いたげな視線に、珍しく彼女は視線を泳がせた。 「あー、うん、そうね……なんとなく言いたいことはわかるんだけど……」  黒い化物の事とか、安曇とアキトの事とか……機会があれば、またいずれ。……ね。と、苦い笑みを浮かべる三剣。 「とりあえず今日に関しては、こっちの誤魔化し方(現状の言い訳)を考える方に、集中させてもらえると、嬉しいわ」   とりあえず、上司に笑顔ではぐらかされたことは、さすがの颪にも理解できた。
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