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「はーい、警察です。皆さーん、動かないでー」
三剣が警察手帳を掲げ、部屋の入口に仁王立つ。
室内に居た複数の柄の悪い男たちが、一気に三剣を睨みつけた。
そんな男たちに臆することなく、三剣は時計を見る。
「十一時十三分、家宅捜索入りまーす! あ、コラ! そこ! 動くな!」
三剣がそう言った途端、神薙が一人の男を締め上げた。
神薙 安曇という男は、普段ぼんやりとし、小柄で華奢で、本人曰く「宗教上の理由」とのことで髪も背中まで長くて、颪以上に少女のような見た目なのだが、こういう行動はやたらと素早く、また、やたらと強くて、どんな大柄な男も組み伏し、投げ飛ばしてしまう。
「神薙!」
三剣の言葉に、神薙が男の手を離した。
とたん、男が逆に神薙につかみかかるが、神薙はそれを軽々と避け、足を引っかけて転ばせる。
「あのねー、こっちは、殺された、安藤さんについてお聞きしたいんですけど……おとなしく、教えてくれませんかねぇ?」
工事現場で、男の刺殺体が発見されたのは、本日未明の出来事。
日本刀と思われる凶器にて、何度も斬られ、刺されて死んだ男は、安藤 輝樹といい、暴力団構成員だった。
ここは、その、安藤が所属していた、任侠団体、『玄任会』。
「こっちは、被害者じゃ、ないですか?」
気配もなく突然、颪の背後から、凛と通る声が響き、思わず颪は振り返った。
颪より頭一つ高く、すらりとしたスタイルの良い、白いスーツの、端正な一人の男。
「若頭!」
ざわり……と、室内の男たちがざわめく。
若頭と呼ばれたその若い男は、切れ長の目をさらに細め、ジッと颪の顔を見つめた。
「な……なんッスか?」
「……とりあえず、部屋入るんで、そこ、どいてくれませんかね」
あ、失礼……颪は一歩下がった。
男はその脇を通って室内に入ると、三剣に対峙する。
「聴取は自分が受けましょう」
「あら、素直でよろしいわね」
予想外の反応に、三剣は思わず拍子抜けし、ぱちくりと目をしばたたかせた。
そして、ふと、何かに気付いたような三剣は、ジッと男を見つめる。
「あなた、どこかで、会ったことがあるかしら?」
「さぁ。どうでしょう?」
ふっと頬を緩ませ、男は笑った。
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