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「玄任会は、数年前に会長が変わっています。現会長は、元はカタギだったようですが、前の会長の婿養子となり、先ほどの男は、その新しい会長の、連れ子のようですね」
神薙が、パラパラと資料をめくる。
三剣が事情聴取をしている間に、下っ端の颪と神薙は、情報を集め、そしてまとめていた。
「だから、若頭とか呼ばれてるワリに、ヤクザらしからぬところがあったのか……って、神妙な顔して、どした?」
「いえ……慧羅さ……三剣警部補ではありませんけれど、自分も、彼を、どこかで見たような気がして……」
思わず三剣を下の名前で呼んだ神薙に、颪は思わず目を見開いた。
「何……お前ら、そんな関係だったの?」
「ち……違います!」
赤面して慌てる神薙を、颪はニマニマと眺める。
「そ、そんな顔しないでください! 先輩! その、慧羅さんはオレの、母代わりみたいな人なんです!」
母代わり? 疑問符を浮かべる颪に、神薙はそうです! と得意げにふんぞり返った。
「慧羅さんには、息子が一人いますけど、他に三人の養子を育ててますし、その、オレもそのついでっていうか……籍は入ってないですけれど、オレの母が死んで、一緒にまとめて育てられたというか……」
「へー……意外……」
三剣が未亡人であることはちらりと噂に聞いていたのだが、バリバリのテンプレート・キャリア・ウーマンのイメージが強い三剣のプライベートなぞ想像したことがなく、また、家庭的な印象もほぼ無かったので、そんなに大家族とは、思いもしなかった。
そして、あながち、『仔犬』は、間違いじゃなかったか……。
「そうじゃなくて! 先輩! 手と目をちゃんと動かしてください!」
少しからかい過ぎたか……じっとりと睨んでくる後輩に「わかったわかった」と、颪は苦笑を浮かべた。
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