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「な、何の御用、ですか?」
颪とともに、呼び出された神薙は、キッと若頭を睨んだ。
もっとも、元来少女のような柔和な顔なので──悲しかな、凄みが足らない。
安藤の死体が見つかった、あの工事現場。
規制線が引かれ、関係者以外立ち入り禁止のハズではあるのだが、横積みされた鉄骨の上、汚れることも厭わず、白いスーツの若頭は座ってた。
既に日は落ち、街灯も少ないため周囲は薄暗い。
満月に近い月が出ていることが、せめてもの救いだった。
若頭は一人、膝の上に小型のラップトップ・パソコンを置いて、何やらカタカタと指を動かしていた。
そのディスプレイが照らす光が、もっとも強い光源──。
「お前、一人か? 舎弟は?」
「ええ。他の人間は、危険なので、連れてきませんでした。これから起こること、あまり、たくさんの人間に目撃されて良い……という、話でもありませんし」
目撃……? 若頭の言葉に、颪は眉をひそめた。
「声をかけておいてナンですけど、君も、帰った方が、いいかもしれませんね」
「はぁ?」
なんだそりゃ! と、颪はくってかかった。
人の弱みにつけ込んでおいて、それはないだろうそれは!
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