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北風の忘れもの
春が近づき、日差しが気持ちよくなってきた。
今年度の大学の講義がようやく終わり、少し遅めの春休みが始まった。今年はインフルエンザが流行し休講が重なったために、この時期まで補講となってしまったのだ。
大学から帰宅し、アパートのポストを開ける。いらないチラシの山、その中で求人募集のチラシが目についた。
「バイトかぁ。やるのも悪くはないかも。」
そう呟きながら玄関に向かう。
―視界の端に何かが入り、そちらに目を向ける。
白に限りなく近い銀髪、透き通るように白い肌、真っ白なワンピース。小柄な女の子が階段下に倒れている。
「え…え?!」
こういうときに何をすればいいのか。一瞬迷ったあとに駆け寄る。
「大丈夫ですか?!」
そう言って身体を揺するが、とても冷たくなっている。これは、かなりまずいのでは…。
「う…。」
女の子が声を漏らす。とりあえず、まだ生きているようでホッとする。
「大丈夫ですか?どこか具合がわる…」
心配する僕の声を遮って、少女はつぶやいた。
「雪…食べたい。」
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