北風の忘れもの

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

北風の忘れもの

 春が近づき、日差しが気持ちよくなってきた。  今年度の大学の講義がようやく終わり、少し遅めの春休みが始まった。今年はインフルエンザが流行し休講が重なったために、この時期まで補講となってしまったのだ。  大学から帰宅し、アパートのポストを開ける。いらないチラシの山、その中で求人募集のチラシが目についた。 「バイトかぁ。やるのも悪くはないかも。」 そう呟きながら玄関に向かう。 ―視界の端に何かが入り、そちらに目を向ける。 白に限りなく近い銀髪、透き通るように白い肌、真っ白なワンピース。小柄な女の子が階段下に倒れている。 「え…え?!」 こういうときに何をすればいいのか。一瞬迷ったあとに駆け寄る。 「大丈夫ですか?!」 そう言って身体を揺するが、とても冷たくなっている。これは、かなりまずいのでは…。 「う…。」 女の子が声を漏らす。とりあえず、まだ生きているようでホッとする。 「大丈夫ですか?どこか具合がわる…」 心配する僕の声を遮って、少女はつぶやいた。 「雪…食べたい。」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!