《第四章 蒼穹》

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《第四章 蒼穹》

Promised You 洋子は東京へ戻ると、はじめが死去したことを知らされた。自分の人生に大きな影響を与えた男二人を同時に亡くしたのだ。通夜には出席することにした。青山葬儀所で業界関係者、四大タクシー会社の社長が一堂に集まった。それぞれが様々な思いを抱いて故人を見送った。洋子は、喪主の妻啓子に挨拶に行った。「この度はご愁傷様です。それとご無沙汰しておりました。」洋子の漆黒の黒装束が会場に映えた。はじめの死をより厳粛なものに彩った。少し前まで一緒に仕事をした仲間たちとも一時の会話を楽しんだ。洋子の祖父とはじめの父親との関係、金の串刺し、一緒に見に行った韓国の海、晴海でのキス全てが走馬灯のように甦っては消えていった。この青空に吸い込まれるかのように。参列者は1000人以上でその中には乗務員も多数いた。下の者にも慕われる経営者であった。洋子は今夜の通夜だけ出席し、翌日の葬儀には出席しないことを伝えた。通夜も一通り終わる と乃木坂駅に向けて一同に帰り始めた。そして洋子もその雑踏の中に消えていった。     
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