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 それは、ふわりと舞い上がるように軽く、胸の中心を貫くように力強く、頭の奥が痺れるほどに甘い声だった。  高まる体温に、鼻の奥が痛み出す。  漏れそうになる声を手で押さえ、いつもより少しだけ顎を上げるようにしてから歩き出す。  頬に当たる風の冷たさに視界が狭まるけれど、足を止めることは出来なかった。  止まったら、もう、走れなくなりそうだった。  大きくなる呼吸と、走り始めた鼓動を抱えたまま、体を弾ませる。
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