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 吸い込んだ冷たい朝の空気と地面を踏みしめる自分の足音と耳から流れ込む君の声だけが、空っぽになった僕の体を満たしてくれていた。  冷え切った肌の上を流れる熱は、自分の涙だと気づく前に風にさらわれて消えていく。  視界の半分を占める空はまだ夜の色を残していて、吐き出される自分の息の白さを一瞬にして暗く染めてしまう。  それでも鼻に届く空気の柔らかさから冬のニオイが薄まっていることに気づき、少しだけ体が軽くなった気がした。
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