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早くなる鼓動に押されるように、蹴り出される足もスピードを上げていく。
じわりと首の後ろで生まれた汗が熱を放ち、上がる息に口が大きく開いていく。
寒さはもう感じない。
上がる体温に、痛み始める足に、呼吸すら苦しく感じる。
そうだ……僕はもういっそ苦しいくらいになりたかったんだ。
この苦しさが僕にあるすべてだったら、どんなによかっただろう。
だけど、僕の中には止まることなく君の声が流れ続ける。
イヤホンを外せば、停止ボタンを押せばそれは止まるのに、僕にはそれができない。
もう染み付いたように当たり前に、僕はイヤホンの絡まりを解き、その先を耳にかけ、そっと再生ボタンに触れてしまう。
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