両親

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両親

彩子は24歳の時、好きな男性がいて結婚したいと思ったが長女だったので家に残らなきゃならない、つまり後継ぎなのでお婿さんになってもらわないと結婚は出来ないだろうと思っていた。でも、おなかに赤ちゃんがいたので、結婚しなくてはならなかった。彼は1人暮らしで 、しかも家を建てたばかりだった。彼は両親も一緒に来てくれていいと言っていた。その言葉がお守りになって、思い切って両親に彼の事を話した。勿論、彼も一緒に来て両親に挨拶をするという形になった。 彩子は母は賛成し、父は絶対 反対するだろうと思っていた。ところがは母は黙り込み、賛成したのは父だった。勿論、彼は娘さんと一緒に来て欲しいと話した。それには、父は「ありがたい話だが、この家を空にするわけにはいかない。」と言い同居を断った。よく考えれば当たり前の話で両親を侮辱するような話だった。父は「時々、顔を見せてくれればいいから。」と穏やかな顔で言った。彩子は母のほうを見た。どうしていいか、わからないような顔をしていたが、その場では何も言わなかった。 挨拶を済まし、彼は帰った。 彩子は母と2人になった時、「母さん、意外だったね。父さんが許すなんて。」と話し掛けた。母は「勝手に許可して。あなたが家を出ると父さんと2人だけになってしまう。親を捨てていくんだね。」と怒ったように言った。そして「父さんは自分だけ良い人になって。」と続けた。かなり怒っていたので、その声が父に聞こえてしまった。「仕方ないだろう。」って父が私たちに聞こえるように言った。その声を聞いて母は黙った。さっきは、許可してもらって嬉しかったが、今は最悪な気持ち。きっと、父さんも本当は許可なんてしたくなかったんだ。両親の気持ちがわかり悲しくなってしまった。きっと、赤ちゃんの事も嬉しく思ってないんだろうなって。その日は、それ以上の話はしなかった。
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