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徳子は自転車で通勤していたが彩子の結婚が決まってからは彩子の運転する車に乗って会社に行くようになった。途中で降りて、そこから会社まで歩いて行った。彩子が仕事が終わると徳子の会社へ迎えに行き、一緒に買い物をして家に帰った。徳子を車の中で待っている時 、中学生の頃 塾の送迎をしてくれた徳子の事を思い出していた。徳子は車の免許がなかったので自転車で送迎してくれた。自転車の後ろに乗るのではなく、一緒に歩くのだ。川沿いの長い道路があったので、暗くなると怖い道になっていた。母だって怖かったに違いない。きっと、彩子を送り届けた後は、全速力で自転車を走らせて家に帰り、迎えに来る時も全速力で川沿いの道を走って来たんだろうと思う。長い髪が乱れていたから想像出来た。母親と一緒に その道を歩く時は 怖いというよりは嬉しかったのを覚えている。母親と一緒に過ごせる時間だったから。彩子には本当に貴重な時間だった。その時の気持ちと今の彩子の気持ちが同じだった。「あと、何日、母さんと一緒にいられるんだろうか。」彩子は そう思う事が多くなった。母も同じ気持ちで自転車通勤を止めたのだろうと彩子は思った。特別、彩子が甘えん坊なのではなく この時期には誰でも母と一緒に過ごしたいと思うのではないか。そんな事を思いながら徳子が来るのを待っていた。徳子が来て車に乗ってスーパーへ行き夕飯の買い物をして家へ向かった。
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