4.誘惑

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4.誘惑

 (かつ)()(だい)所長が()(こん)を連れて会議を中座したため、会議は総括のないまま終わってしまった。  言い争いで後味の悪い幕引きだっただけに、多くの所員たちは、ざわつきながら部屋を出て行った。  登壇に立ったままのルリ子を囲むように、彼女と親しい五人が集まって雑談が始まった。その中には(とおる)の姿もあった。  彼らの推理をまとめると、 「()(こん)は小鳥に興味がある。というより、気がある」 「自分だけが小鳥を独占したい。自分の思うように検査したい」 「小鳥と結婚して子供をもうけることは、実験の域を超えて、半分は彼の本気かも知れない」の3点だった。 「まずいわね。小鳥が恋愛対象にされたら、彼、何をしでかすかわからない」とは、顎の下に手を当てるルリ子。 「あまりに地球人そっくりだから、対象にする可能性があるな。監視をしないといけない。今、僕らの手から離れているので、すぐ呼び寄せないと」とは、額に手を当てる(とおる)。  二人は、急いで庭の方へ足を向け、小鳥を探しに出かけた。    ◆◆◆
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