第1話:飛行夢想の章「誘拐されたら推しと同室」

1/8
前へ
/247ページ
次へ

第1話:飛行夢想の章「誘拐されたら推しと同室」

――だれでも天才になれるよう生まれてくるが、実際になれる者はほんの僅か――  社会人になってないぼくが言うのもなんだが、モラトリアムや余暇ほど扱いに困るものはないと思う。  無論、遊びのプロにかかればそんなこともないだろうし、そんなに暇を持て余すこともないと言う人もいるだろう。  だがぼくの場合は違う。そんなに遊びが得意な方ではないし、現在絶賛暇を持て余し中だ。  それというのも現在のぼくは就職が決まった上、卒業も必要な単位も全部とっている大学四年生だからだ。突っ込んだ話をすればぼくは留年している。今は2回目の四年生だ。大学までガリ勉だったぼくは去年の就職活動で全敗した。するとゼミの教授が「第二新卒より留年して新卒扱いの方がまだいいぞ」と留年を勧めてくれたのだ。  名門大学とはいえ私立なので親に電話し相談した。すると親も『教授さんの言う通り。この分は出世払いで返してくれればいいさ』と今年分の学費とアパートの家賃を送ってくれたというわけだ。     
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加