バレンタイン

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2月14日を迎えた今日、世間ではまだ溶けきらない雪が薄く輝き、冷たい風が僕らの肌をさしている。 ベッドの横にある時計と共に僕の胸もチリチリと鳴り出す。 いつものように身支度を整えてから最後にとスクールバックを開いた。 授業で使うものを確認し、カバンの余白には、まだ見ぬチョコレート達が入るかもしれないと、余計な心配をしてから、僕は何食わぬ顔で家を後にする。 どうしてなのだろう、女の子が僕にチョコレートを渡したいのかもしれないと妄想してしまう。 けれど、中学始めてのバレンタインはそんな甘いものではなく、女の子達はお互いにチョコをあげあうばかりで僕らの事は見向きもしない。 それを見て僕は気付いた。どうして、チョコなんかほしいのだろうと。そもそもチョコなんて買えると。そんな僕のトロトロな弱気を、強気な弱音で包み込んだ。 あの子が今渡したフォンダンショコラみたいに。 僕は、完全にとはいかないにしても、良くよく気にしないように一日を過ごした。 けれどその時は前触れなく訪れた。 放課後、帰りのホームルームを終えたあと1人の女の子が前に出た。 「これから男子にも義理チョコあげるから、少し残って」 クラスのヤンチャな奴が僕らの心の声を漏らした。 「いやっほぉぉう」 キモいと罵られる彼に、心ながらの拍手を送った。 結局、僕は4つのチョコレートを貰えた。カバンを、いつもより少しだけ大切にもって帰り仕度をした。 そんなイベントも無事終わり、下駄箱から靴を取り出した辺りで、クラスの女の子が話しかけて来た。 「ちょっと、いい?」 それはクラスで1番の美少女、ゆきちゃんだった。 「何?」と、そっけない返事をする。 彼女は可憐に、少し照れながらよそよそしく言った。 「あの、すごい恥ずかしいんだけどね。 これ、見てくれたら分かるから」と、綺麗に包まれた手づくりのトリュフが入った包みを渡してきた。手紙を添えて。 彼女はクールな僕に向かって続けた。 「帰り駿くんと一緒になると思って、早めに渡さなきゃって、なんか申し訳ないんだけど」 「大丈夫だよ、2人で食べれば」と、僕は彼女の言葉を遮った。 そして、「またね」と冷静に別れを告げた。 帰り道、僕は彼女の言った通り駿と一緒に帰っていた。けせれど親友の彼の言葉なんてもう耳に入ってこなかった。 僕の耳の中には、彼女の甘くかわいい声が永遠と巡っていた。
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