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あまりにショックだったらしい。翌日、私は熱を出した。
会社に休む旨を電話で伝えて、布団に包まる。
「……もう、あそこに行けないのかな」
そう考えると、辛くて仕方なくなった。唯一、心安らげる場所だったのに。
でも、「人間かもしれない」と思いながら、シュリくんと今までのように接するのは無理だろう。
店の人に聞いてみようか? さすがにしらばっくれるだろう。
私は布団に包まったまま、近くに置いてあったリモコンでテレビの電源をつけた。
すると、ちょうどニュースが放送されていたのだが、そこに映っていたのは、見慣れた店だった。
機械仕掛けのマリア。
私の理想郷だった店の名前の看板が、大きく映されている。
アナウンサーの男性は、店の前に立って必死にニュースを伝えてきた。
ぼんやりとしながらも、私はどうにか彼の言っていることを理解した。
『機械仕掛けのマリア』は、アンドロイドが接客する店というのが売りだったが、実際はアンドロイドではなく人間がやっていたと。
江梨菜の推理は、全て当たっていた。
支配人は同じで、場所と名前を変えて同じコンセプトでやっていたのだと。
どうして同じ手口を繰り返したのか、ということもアナウンサーは話していた。
この手口は、かなり儲かるらしい。実際にアンドロイドを買って、プログラム通りに動かすと、相当なお金がかかる。しかし、人間にアンドロイドの振りをさせたら、ずっと安くつく。
しかし客はアンドロイドの接客だからと、多少高くても気にせず払う。人件費は実際より安くついているのだから、店はその分儲けるというわけだ。
気分が悪くなって、私はテレビを消して布団の上でうずくまった。
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