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約束通り、食後に庭を散歩する。
桜の香りが辺り一面に芳しく広がっていた。若草色の羽織ものを肩にかけた清様が一歩先を歩き、突然振り返って俺に微笑みかける。何か言いたそうな雰囲気に、四十雀(シジュウカラ)が花房を啄むのを見ていた俺は慌てて駆け寄った。
「雄一郎には好いとる女子はおらんのか」
「えっ……あ、そ、そんな、めっそうもないです」
「滅相もないって、雄一郎も17になるだろう。そろそろ縁談の一つや二つ、無くてはだめだよ」
幼子から急に年上の顔になった清様に、俺は慌てふためいた。
ことあるごとに俺の将来を心配してくださるが、此方は全く分かっていないのだ。
そもそも一年中伊集院家の屋敷にいる身で女子と話す機会がない。邸内に女中は数人いるが、いかんせん清様よりお綺麗な方はいないのだ。毎日、お世話をさせていただき、日に日に彼の魅力に取り憑かれ纏う空気に酔いしれていた。手がお身体に触れ憂いな表情を見るだけで、俺の心は振り子のよう踊り出す。全てが清様ありきな俺には縁談なんて滅相もないのだ。
俺は清様を心から好いている。
他には全く興味が無い。清様さえいれば何も要らないと随分前から自覚していた。
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