想うは君の面影

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それから度々、清様のお身体から忌々しい痣が確認できた。見るたびに怒りや嫉妬の念が渦巻き、清様へ複雑な感情を抱くようになる。 何故、醜くくて欲望に塗れた安西をお選びになるのか。 俺がいつもお傍にいるのに、どうして、どうして……何度も自問自答したが答えは出なかった。 話を春へ戻そう。 庭の桜が満開に花を讃えるのも、庭師の仕事が素晴らしいからだと、久しぶりに桜を愛でる旦那様をお見かけした。清様と散歩してから数日経った夕方だった。 偶々居合わせた俺は、旦那様と目が合ったので、速やかに駆け寄る。 「君は確か……清の世話人だね。よくやっていると聞いてるよ」 清様は父親似で、特に横顔はそっくりだ。 お褒めの言葉に俺は深々とお辞儀をした。 「私には勿体無いお言葉です。ありがとうございます」 「何か不自由はないかね。よかったら訊こうじゃないか」 旦那様は滅多に姿を見せないが、使用人へご褒美を与えてくださる時がある。俺にもその瞬間が訪れたのだと、息を大きく吸った。ここで間違えたら一生後悔する。 俺の欲しいものは、金でもなく、物でもなく、地位でもない。 俺の欲しいものは………… 「実は、旦那様に訊いて頂きたいお話があるのです…………」 俺は、清様を守るべく、安西の悪行を旦那様へお伝えした。話が進むたびに旦那様の目が驚きで開かれ、長いため息が溢れた。 俺が目にしたこと、奴がよく離れへ出入りしていること、最近では手首に縛り傷があったり、お部屋を出られない清様の身体に沢山の痣があること。 全ては安西が悪いと、奴の所為にしてお話した。憎い庭師は消えればいいのだ。 「…………わかった。話してくれてありがとう。どうするか検討せねばなるまい」 「どうか清様を御守りください」 去っていく旦那様の背中を俺は満足気に眺めていた。 それから、季節が新緑眩しい初夏へ移動し始めたある日、安西が消えるように屋敷からいなくなる。 俺の願いは叶ったのだ。 喜びと共に、あることを告げられる。 『お前はもう用無しだから、田舎へ帰りなさい。清様は遠くへ行かれることになった』と、旦那様の執事からはっきりと述べられ、雷に打たれたように打ちのめされる。 清様は、清様は…………一体どこへ……? とんでもないことをしてしまったと、俺は離れへ急いだ。
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